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モリヤマハルカ

恥の文化と英語発音


先月行われた、琉球新報の石井記者とのインタビューの一部、記事に含まれなかった部分を公開します。

石井記者:英語を母語としない人たちが、道具としてへたでも伝わればいいのだろう、という堂々とした姿を見るに、そして、ひとつはまあそれはそうかなと思うにつけ、その辺の意識は日本人ってまだ恥の文化が根強いのでしょうか。

モリヤマ :恥の文化。正にそれです。相当根強く、足を引っ張っていると思います。

以前私のメンターに「日本人に教えることで一番難しいのは、自信だ」と言われたことがあります。

メッセージの中に「正しいことを含んでいるか、正しくなる可能性を秘めているか」を考える欧米文化と「間違いがないか」を気にして萎縮する日本文化の根本的な違いでしょう。

前者は、その言葉の真意や情熱に集中できるので強いのですが、後者は間違いの可能性に潰されてしまいます。まず、間違っていると自分でもわかっている発音のことで頭の中が真っ白になる。言い換えれば、他者が自分を笑う様子を想像し、過剰な自意識に押しつぶされてしまうのです。

「恥の文化」は視点を移してみると「シャイ」つまり「自意識過剰」にしか見えません。日本人は知識によって恥に気づいていると考えがちですが、国際社会では理解してもらえないのです。ニューヨークに移り住んでカルチャーショックだった部分はまさにそこです。こちらでは日本人的視点で人目を気にすると、大の大人が子供扱いされます。日本人ほど、国際社会で不本意に子供扱いを受けてしまう人種はいないのではないでしょうか。

「英会話」が通じない理由はもちろん発音にもありますが、「恥の文化」が作る溝は、発音以上に深いと思います。「恥の文化」は幼少期に「恥ずかしいからやめなさい。」と言われ植え付けられるパターン化された思考回路なので、大人になってからコントロールするのは、本人の認識と努力を要します。そんな中で発音をマスターし自信を持つことは、会話の中の無意味な不安要因を消してくれるので、伝える会話力を助けます。

石井記者:発音を押さえてなければ、成功で届く高さも変わってくるという現実もありますか。

モリヤマ :自分の能力に対する自信に満ち溢れ、発音を押さえなくても成功できる人もいると思います。でもそんな人ですら、発音を押さえる意義はあります。残念なことに、日本語訛りを聞きとることは英語ネイティブにとって至難の技なのです。日本語に近い音を出している限り、根本的なリズムにも影響を与えます。音もリズムも違うものを聞きとるのは、聞き手の大変な想像力と傾聴力を要します。

コミュニケーションが円滑になると、相手はリラックスできます。そういう意味で、発音を押さえることはあらゆる分野での成功を大いに助けると思います。

石井記者:俳優さんとか高度プロフェッショナルな仕事は特に発音によって成功レベルが変わるのか、それとも自信の問題ですか。

モリヤマ :俳優がクリアな標準語発音を求められるのは、こなせる役の範囲が変わってしまうためです。また、日本語訛りでオッケーな日本人役も、映画や舞台に多くありますが、内容が通じる必要はあるので、トレーニングは必須です。

講演者の場合は、訛りによって愛嬌や面白さが加わりますが、内容がわからなければ聴衆は眠くなります。

今月、NYの外科のお医者さんがレッスンに通っておられますが、手術中にメスをどこに刺すのか通じなかったら怖いですよね。「心臓ですか?腎臓ですか?」って何度も聞けません。

仕事上の自立欲が高まると同時に、覚悟を決めて発音に目を向ける日本人は多いです。

インタビューの続きは次回シェアいたします。


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